研究概要 |
1.膵外分泌細胞を液体ヘリウム温度で急速凍結し, 凍結置換法で包埋・超薄切片作製し電顕で観察した. その結果, 1)化学固定試料にくらべてGolgi小胞がより多数存在した. 小胞に大型(約60nm径)と小型(約40nm径)があり, 前者は粗面小胞体由来の輸送小胞に多かった. 2)輸送小胞が存在するGolgi cis側の細胞質は均一で特別な基質からなる. 3)最cis側のGolgi槽が扁平板状(〜30nm厚)を呈し広い範囲にわたることがあった. 4)cis側からtrans側にむかって, 槽の内腔は次第に広くなる傾向がみられた. また内容の電子密度がcis側からtrans側へ順次増加し, 成熟分泌果粒の密度に近づく場合も見られた. しかしいずれの場合も, trans側にあるいわゆるrigid lamellaは他の槽とは異なる形態と内容を示していた. 2.初代培養ラット肝細胞にタンパク質の分泌, 修飾に影響する各種薬剤を作用させ, 形態学的変化を電顕で追究し, 平行して行なわれた生化学的分析結果と比較検討した. 1)monensinを加えて培養すると30分で既に細胞内に大小の空胞が多数認められる. これらはいずれもGolgi装置に関連があり, trans側のGolgi槽の開大が空胞の形成につながる. 2)弱塩基性アミン(chloroquine,methylamine,trisaminomethane)では, Golgi装置と水解小体のみに著明な変化がみられた. すなわちGolgi装置の増大trans側槽と水解小体の開大である. これはtrans側Golgi槽と水解小体の内容は酸性であり, これが薬剤によって塩基側に移動することによると考えられる. 3)brefeldin Aの作用では, 典型的なGolgi装置の構造が認められなかった. 生化学的には粗面小胞体からGolgi装置への輸送が阻害される結果が得られた. 3.これらの結果から, Golgi装置の形態は, 膜と合成物質の粗面小胞体からの輸入と, trans側からの輸出のバランスの上に構造がなり立っていると考えられた.
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