研究概要 |
視床下部における種々のペプチドニューロン、終末やカテコラミンニューロンの線維分布について以下のような結果が得られた。(1)イヌ視床下部室傍核において、大細胞性領域のニューロン内部にはVIP,PHIとバソプレシンを共存的に含むものがあり、それらは主として下垂体後葉に投射し、一部は正中隆起外層毛細血管壁に分布する事が明らかにされた。(2)視交叉上核の腹側底部に分布するVIPニューロンはその全てにおいて同時に同じ前駆物質から産生されるPHIを含んでおり、また、一部はGRPを含み3つのペプチドを含有するものが存在する事が明らかにされた。(3)視床下部視交叉上核には、VIP/PHI,バソプレシン,ソマトスタチンなどを産生含有する神経細胞が分布、また、下部脳幹よりセロトニン、外側膝状体よりNPYニューロンの線維が特に腹側底部に投射している。そこで、VIP/PHI産生ニューロン,軸索,終末の超微細構造を電顕免疫組織化学法で観察し、視交叉上核腹側底部に分布するVIP/PHIニューロンは小胞体,ゴルジ装置,ミトコンドリアなどの小器官以外に径80〜100nmの免疫陽性の暗調顆粒を含んでいる。一方、VIP/PHI線維終末は終末小胞,ミトコンドリア,暗調顆粒を含み、視交叉上核内部において免疫非陽性の神経細胞や樹状突起にシナプス形成を行っている事が明らかにされた。(4)視交叉上核の腹側底部に分布するNPY神経終末及びその起始ニューロンである外側膝状体に分布するNPY産生ニューロンの超微細構造を電顕免疫細胞化学により観察した。NPY神経終末はその内部に終末小胞,ミトコンドリア,暗調顆粒を含み、免疫非陽性神経細胞体や樹状突起の表面にsymmetrical synapseを形成していることが明らかにされた。(3)(4)の結果から、NPYニューロンは網膜からの線維やセロトニン線維と共に視交叉上核腹側部に分布する恐らくVIPニューロンに入力し、VIPニューロンの少なくとも一部は内性ニューロンと考えられる。
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