研究概要 |
(1) 慢性閉塞性肺疾患々者(COPD)についての検討 12名のCOPD患者に対し、合成プロゲステロン(クロールマジノンアセテート,CMA)を二重盲検法により投与し、血液ガスと呼吸調節機能につき検討した。動脈血【P_(co2)】(【P_(aco2)】)はプラセボ投与支群よりも平均4.6±0.6(SE)Torr有意に低下し、炭酸ガスの蓄積を防ぐ上に有効であることが示された。この【P_(aco2)】の低下は、分時換気量(【V_I】),一回換気量(【V_T】),平均吸気速度(【V_T】/【V_I】)の増加を伴い、呼吸中枢からの換気ドライブの増強に由来することが示された。CMA投与により、炭酸ガス吸入による肺胞炭酸ガス圧(【P_(Aco2)】)-口腔内閉塞圧(occlusion pressiure,【P_2】)の間の関系と示す応答曲線のスロープは有意に増強した。低酸素刺激に対する換気および【P_2】の応答曲線は、CMA投与による【P_(aco2)】の低下を回復させると、有意に増強した。また、吸気側に10cm【H_2】O・【L^+】.【S^(-1)】の抵抗を負荷して、C【O_2】吸入に対する【P_2】の応答を見ると、有意の代償作用の増強が認められた。このことは、CMAが慢性肺疾患による気道病変の増悪を招いた際にも、換気とガス交換の保全に有効であることを示唆した。 (2) COPD患者内でのCMA投与の効果の差違 COPD患者の中で、気管支炎型と肺気腫型に分けてCMA投与の効果を検討した。前者においては、CMA投与によって気道系の実効インピーダンスが対照値より上昇することが認められ、換気ドライブの増加が有効な換気効率につながることが推測された。しかし、肺気腫型では、実効インピーダンスは対照値と有意の相違は見られず、CMA投与の有効性が疑われる結果となった。このように、CMAの臨床使用にま症例を選んで投与する必要性が認められた。
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