研究概要 |
分離精製した小腸並びに腎尿細管刷子縁膜に存在する小分子ペプチド(di-及びtripeptide)の担体輸送は、【Na^+】には全く依存せず、pH勾配(pHo<pHi)により促進され、かつ起電性を示すことを明らかにした。更にpH勾配と小胞内負の膜電位が存在する条件下ではGly-Glyは著明に上り坂に輸送され、顕著なovershootuptakeが見られることを明らかにした。これらの事実はペプチドが【H^+】と共輸送されることを示している。この共輸送のstoichiometryを決定する目的で、ガマの反転嚢標本を用い、【Na^+】のない条件下で、粘膜測に加えたペプチドによって増大する短絡電流と加えたペプチドの内向きフラックスを同時に測定すると、【H^+】ペプチドの輸送比は1.78となった。等価電気的回路を用いて刷子縁膜を流れる共輸送電流と短絡電流増加の関係を解析すると、1よりやや大となることから、【H^+】/ペプチド共輸送の連結比は2:1と考えられる。無【Na^+】条件下では中性アミノ酸は全く電気的変化を誘発しないが、ジ並びにトリペプチドは何れもMichaelis-Menten速度論に従う膜電位並びに壁内外電位の変化を誘発することが確かめられた。このことからペプチド誘発電位を多種類のペプチドについて観察することにより、ペプチド担体の特異性を明らかにしうるが、グリシル・ジペプチド,アラニル・ジペプチド,トリグリシン,トリアラニンは何れも共通の担体で輸送され、かつKt値は狭い範囲(0.5〜2.0mM)にあることが明らかになった。また9-aminoacridineの蛍光測定とdigitoninによる平衡法を併用して分離小腸上皮細胞で細胞内pHを測定すると、正常メジウム条件下では7.15であり、上皮細胞の表面のいわゆるmicroclimate pHをpH感受性微小電極で測定すると6.10〜6.20であった。このpH差と2:1のstoichlometryから考えると、【H^+】/ペプチド共輸送系は【Na^+】/アミノ酸共輸送系より遙かに高い濃度勾配を作りうる系で、かつ多種類のアミノ酸を無差別に吸収する系と云える。
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