研究概要 |
グルタミン酸は脳神経系における主要な伝達物質として働いているが, グルタミン酸のレセプターの協力な阻害物質をジョロウグモ中に見出し, これを用いて各種神経組織におけるグルタミン酸レセプターの機能をしらべた. イセエビ歩脚神経筋シナプスに対してジョロウグモ毒素(JSTX)は微量で不可逆的な阻害効果を示すが, 神経刺戟による興奮性シナプス後電流の解析の結果, 毒素の作用は膜電位依存性がなく, また電流の下降相の時定数にも大きな変化が見られなかった. この事はクモ毒素がレセプター分子のうち, 電圧依存性部分とは離れた部位に結合する事を示唆している. JSTXの中枢神経細胞に対する効果をモルモット脳のスライス標本を用いてしらべた. 海馬CAI鐘体細胞に対するシナプス後電位およびグルタミン酸電位はJSTXにより抑制された. 薬理学的な実験結果から, JSTXは非UMDA型レセプターを遮断すると考えられる. JSTXの化学構造を東大薬学部と共同研究により明らかにした. この結果はジョロウグモ毒素は構造類似物質を数種含み, 24-ジヒドロオキシフエニル酢酸, アスパラギン, カタベリンを共通構造とする事が分った. この構造に基づきクモ毒素の化学合成を行い, 活性を確認した. さらに各種の合成アナログ化合物を作成し, 構造と活性連関をしらべた. この結果, クモ毒素構造のうち, 24-ジヒドロキシフエニル酢酸, アスパラギン, カダベルリンはグルタメイトレセプターの阻害発現に必須の構造であること, また残りのポリアミン基が毒素とレセプター分子との結合性に関連あるものと考えられる. 合成クモ毒素を放射性ヨードで標準化し, オートラジオグラフィーによる, グルタメイトレセプターの可視化に成功した.
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