研究概要 |
昭和61年度における本研究は条件設定の点から前期と後期に分けることができる。前期の研究は1984年9月末に開始し、1986年4月末で終了した。この間、雌ニホンザル4頭を用いて、人工気象室(室温22℃)にて、短日(8L16D)及び長日(16L8D)条件を4ケ月毎に交互に負荷し、性ホルモンの分泌動態から生殖内分泌機構に対する光周期の影響を解析した。また、別の3頭には上記環境条件とともに、松果体ホルモンであるメラトニンを持続投与し、松果体の関与についても検討した。その結果、日長操作と卵巣活動の間に明瞭な関係は認められず、原則的には自然条件下における年周リズムが継続した。無排卵期の長さは比較的安定しており、4頭中3頭で215,218,220日とよく一致した。(他の1頭は277日であった)。即ち、早く卵巣活動を停止した個体は次の繁殖期が早く到来する傾向があった。また、メラトニン投与の効果は不明瞭で、1頭では不規則に排卵が継続したが、他の2頭は無処置群と同様であった。上記の結果から、ニホンザルの季節繁殖リズムは光周期を単独支配環境因子として成立しているのではないとの結論を得たので、次に日長条件とともに温度条件も同時に負荷して研究を継続した。即ち、1986年1〜4月の短日・恒温条件に引き続き、5〜8月までの短日・低温条件(8L16D+12℃)を、9〜12月まで長日・高温条件(16L8D+30℃)を負荷した。その結果、短日・低温条件下で全頭ある程度の卵巣機能の活性化が伺われたが、前記約7ケ月の無排卵期を短縮させて繁殖期を回帰させたのは1頭のみ(無排卵期の長さは110日)で、他は無排卵期の長さで、218,221,177日後の9〜10月に長日・高温条件下で繁殖期を回帰させた。 以上のことから、ニホンザルの季節繁殖リズムは、日長や温度のような環境要因以外にも、おそらくは社会要因のような他の要因が組み合わさって成立していると考えられる。
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