研究概要 |
1.嗅球摘出(OB),中脳縫線核破壊(Raphe),側坐核破核(Acc)によるラットのmuricide発現に伴う脳内モノアミン動態の変化を高速液クロー電気検出器により測定した。いずれのモデルでも共通して、術後2週間で外側視床下部(LH),視床下部腹内側核(VMH)および扁桃体内側核(AME)のノルアドレナリン(NA)量が増加し、OBおよびAccラットでは乳頭体(MB)のNA量も増加した。一方、Rapheラットのセロトニン(5-HT)量は多くの脳部位で著明に減少し、OBおよびAccラットではLH,MBの5-HIAA/5-HT比が有意に減少した。即ち、これらのラットのmuricide発現にはLH,VMHのNA機能低下と、LH,MBの5-HT機能低下が重要と考えられる。 2.OBラットにmaprotilineを7日間反復投与すると、muricide抑制に伴ってLHとAMEのNA量の増加およびLHの5-HIAA/5-HT比の減少が正常化された。一方mianserinではとくにLHとMBにおける5-HIAA/5-HT比の減少が正常化された。 3.強制水泳による絶望モデルでもOBラットと同様LHとAMEのNA量が増加し、これが3環系抗うつ薬により回復した。 4.OBラットのAME内にNAを微量注入するとmuricideが抑制されるが、この作用はneuropeptideY(NPY)を同時に併用すると著明に増強された。また、ラジオイムノアセイ法でOBラットのNPY量を測定すると、術後4週間でとくに扁桃体で増加していた。5.Repheラットにおける抗5-HT薬cyproheptadine,cinanserinのmuricide抑制作用はmethamphetamineあるいはNAの前駆物質L-threo-DOPSの併用で著明に増強され、また抗5-HT薬pirenperonもこれらのNA系薬物との併用でmuricide抑制作用を示すようになったが、これらの抗5-HT薬をlisurideと併用してもmuricide抑制作用の増強はみられなかった。これらの結果から、5-H【T_2】レセプターしゃ断作用に、ドーパミンではなくNA神経活動の促進を組合わせた場合に最も効果的な抗うつ効果が現れるという仮説を提唱した。
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