人体病理学者は生検の塗抹標本あるいは切片標本において、良性悪性の判断を強いられるが、これにできるかぎりの客観性を与える事の重要性を断えず感じている。本研究は、これにDNA螢光測光と画像処理の併用法を導入しDNAの定量と同時に、細胞や組織の形態学からえられるデータを色をもつた点の集合(ピクセル)としてディジタルに分析し、もって瞬間的に、その細胞の良性悪性の性質を、病理学者が客観性・再現性高く判断できるよう、援助するシステムを完成させることを目的として行われた。 昭和60年度にはビジコンSIT超高感度カメラを落射型螢光顕微鏡には付加して形通りの螢光DNA測光を行ったのち、光路チャンネルを切り替え、画像を撮影し、thresholding後ピクセルの輝度値をコンピュータにより積分(加算)し測光データと比較しつつ、定量性を高めるためのビデオカメラのバランスの設定、電圧レンジの決定、フィルターシステムの最適化の作業を行い、かつピクセル積分(最大数百万個の加算が必要)を高速で行うアルゴリズムを開発しROMの形でカラーイメージアナライザに付加した。 昭和61年度には、これらのDNA測光データと核のサイズ、形の不整な度合いN/C比などを同時に採集できるようソフトウェアを開発するとともに、組織化学的反応を併用して、診断精度を高める工夫を加えた。きわめて少数しか含まれていないスキルス癌細胞の検出にはガラクトース残基を認識するPNAレクチンなどの併用が、DNA測光によるaneuploidyの検出とともにきわめて有効で、この方法により、はじめて塗抹標本の上でスキルス細胞を検出することが容易にできるようになった。その他の癌マーカーとの併用も、このシステムでは簡単に行え、その画像データはディスクに収めて完全な再現性をもってデータをチェックできる利点もある。こんご、良い腫瘍マーカーと定量および形態画像処理の併用を推進する。
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