研究概要 |
炎症の病理学的特徴である白血球浸潤と血管透過性亢進について, それぞれの活性物質としてわれわれはマクロファージ遊走因子MCFS-1とハーゲマン・カリクレイン・キニン系因子が主要なものであることを見出した. 本研究ではこれらの諸因子の特異抗体による酵素抗体法を用いて, 炎症巣におけるこれらの諸因子の動態を形態学的に追求した. 1.炎症巣におけるMCFS-1の動態. 牛血清グロブリンを抗原とする遅延型過敏症皮膚巣では, 表皮基底膜に連結性線状に強く, 真皮結合織層ではビマン性にやや強い反応がみられ, 正常皮膚ではいづれも反応は弱い. 使用抗体はMCFS-1前駆体(非活性型)にも活性型にも反応するため, 炎症巣の増量が何れによるか識別できない. 炎症皮膚抽出液はマクロファージ遊走活性を示すが正常皮膚抽出液は示さないので, この増量は活性型の増量の可能性もあるが, これを解決するためには, 活性型と非活性型を別々に認識するモノクローン抗体を得る必要があり, 現在その開発を始めている. 非活性型はまた肝で合成され, 腎で異化されることもわかった. 2.炎症巣における血管透過因子の動態. モルモットのハーゲマン因子と高分子キニノーゲン最も同様の方法で調べると, MCFS-1と極めて類似した分布を示した. 3.炎症巣における補体由来因子の動態. C5について同様の方法で調べると, MCFS-1と極めて類似した分布を示した. すなわちMCFS-1前駆体も, キニン産生系諸因子もC5も, それぞれの反応の準備状態として正常皮膚に存在し, 炎症巣で活性化され増量し, 各因子共に全く類似の分布と強さを示した. 使用した抗体間には共通抗原性を認識している可能性はないので, 炎症巣の可溶性のメディエーターはこのような分布を示し, 酵素抗体法が定性反応で, 定量性に欠けるために類似性がますのか, この意義についてはモノクローン抗体による解析を待つ必要が生じた.
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