研究概要 |
A.1n vitro 1)クララ細胞の分離:本研究の実験系がマウスに基礎を置いているので、マウス肺クララ細胞の高濃度,高細胞数分離がin vitro系研究の成否にかかっている。今年度は分離技法として密度勾配法に主眼をおき、連続及び非連続密度勾配に様々な技法を加味して目的の達成を図った。恒常的に得られる成果として、クララ細胞の最高密度は比重1.055〜1.068,細胞濃度4〜6%,1匹当り細胞数2〜5×【10^4】個が達成された。しかし、これら細胞を用いての代謝研究や培養系の樹立,抗体作成等を行うには【10^8】個レベルが必要とされ、1回に500〜1,000匹のマウス処理が必要となるため、マウス使用実験系の再検討を迫られている。目下その打開策を探っているが、レクチン結合性の応用では14.5%の純度を得ている。2)肺発癌プロモーターglycerolの作用の研究:in vivo実験より細胞増殖促進作用をもつ可能性が示唆されたので、BALB/3【T^3】細胞の培養に対する影響を検討し、0.5%添加附近で若干の増殖促進作用を認めたので、検討を進めている。 B.In vivo系:1)glycerolのクララ細胞に対する影響の電顕計測的研究で、数量的にSERの肥大増生、(ミトコンドリアの延長,分泌顆粒の増大等に有意の増加が証明できた。2)グリセロールの肺発癌への影響:4NQO発癌の促進には4週間の投与が必要で、4週以下では増大は有意でなかった。一方ウレタン肺発癌に対し、グリセロールは発生頻度,腫瘍数両者に抑制(p<0.01)を示した。発生腫瘤径は増大をみた。3)ハムスターでの4NQO肺発癌の検討。ハムスターではマウスで認めた肺腺癌の発生は、実験30週までは陰性であった。他方、20週以降では100%の動物に神経内分泌細胞の著明な過形成が証明された。腫瘍の発生は認めていないが、実験動物モデルを欠く肺小細胞癌の実験モデルとしての可能性が示唆され、予想外の新知見を得た。
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