研究概要 |
本年度はglucose oxidaseに代わる他の過酸化水素産生酵素としてgalactose oxidaseの有用性を検討した。Galactose oxidase標識抗体はその酵素活性と抗体活性を維持する必要がある。Galactose oxidase標識抗体の作製にはperoxidase標識抗体やglucose oxidase標識抗体の場合と異なる架橋結合方法を検討する必要が生じた。従来我々が蛋白や糖蛋白の架橋反応に使用するNa【IO_4】法ではgalactose oxidaseの活性が極端に低下した。またglutaraldehyde法では条件を変えても架橋反応後、両蛋白が沈澱していずれの活性も低下した。そこでtolylene-2,4,-diisocynateを使用して2段階にわたる架橋反応によりgalactose oxidaseを家兎抗体に標識する条件を確立している。現在では約20%の酵素活性を家兎IgGに標識できるが、約90%のIgGは無標識のままであると予想されるので、今ひとつ架橋反応の能率を向上させる必要がある。現在は標識された抗体を分離して、この標識抗体の細胞におよぼす影響とNaIおよびcatalaseの適切な濃度とを遊離した脾臓細胞を利用して決定している。またgalactoseはいずれ静注する必要があるので、galactoseの生体におよぼす影響を検討している。癌化により細胞表面でCEAと同様の分布変化を示しかつ血中に溶出しない表面抗原を同定するには、多量の正常上皮細胞の刷子縁を必要としたので、刷子縁の分離方法を確立した。まず摘出された大腸から細胞を遊離して急速凍結を行う。それをマクロファージを分離するのと同様の方法で処理すると、ガラスファイバーに吸着しないのは殆どが刷子縁であることが判明した。そこでこの方法によって得られた刷子縁から糖蛋白を分離して、血中に溶出しない糖蛋白に対するマウス単クローン抗体および家兎抗体の作製を試みている。現在のところ、家兎では少々の抗体は得られているが、ラット刷子縁糖蛋白に対して得られたような単クローン抗体は未だ得られていない。
|