研究概要 |
住血吸虫に対しては、種々の細胞によるIgE抗体依存性のシストソミュラ殺滅作用がin vitroの実験系で示されている。しかし、マウスやラットにおけるin vivoの実験では、防御免疫能とIgE抗体産生における高応答性との間には必ずしも相関が認められていない。一方、肺吸虫の感染防御については、宿主体内移行経路や体表構造の違いから、住血吸虫に対するものとは異なったエフェクター機構の存在も考えられる。そこで、本研究では、次の諸点について検討した。 1)肺吸虫感染に対するマウスおよびラット各系統間における感受性の差異:肺吸虫にとって非好適宿主となる組み合せでマウスやラットを用いた場合、すなわち、マウスには宮崎肺吸虫を、ラットにはウエステルマン肺吸虫(2倍体型または3倍体型)を経口的に感染させた場合、これらの宿主では系統間で虫体回収率に差が認められた。 2)肺吸虫ヘモグロビン融解酵素の精製:吸虫類にはヘモグロビン融解酵素が存在し、宿主ヘモグロビンを栄養源として利用している。本酵素に対するモノクローナル抗体の作製とその防御機構への関与について明らかにするために、大平肺吸虫について本酵素の精製を試み、クロマトフォーカシング法がすぐれた分離能を有することを見出した。 3)日本住血吸虫に対する免疫応答のMHC非連関遺伝子による統御:オランダ国立癌研究所より提供された遺伝子組み換えマウスを用い、IgE抗体産生能および再感染抵抗性について検討したところ、MHC連関免疫応答遺伝子のみならず、非連関性遺伝子の関与をも示唆する結果が得られた。 4)抗日本住血吸虫モノクローナルIgE抗体の作製:感染防御に果すIgE抗体の役割を明らかにするため、日本住血吸虫抗原とのみ反応するモノクローナルIgE抗体の作製を行ったところ、in vivoで防御効果を示す抗体が得られた。この抗体の認識するエピトープは、200KDa,160KDa,97KDa,82KDaの蛋白分子上に存在する。
|