研究概要 |
抗酸菌細胞壁の最も大きな特徴は、天然では最も長鎖の脂肪酸であるミコール酸を含み、疎水性にとむことである。ミコール酸は当初、結核菌の産生する唯一の毒素であると考えられたcord factorや細胞壁骨格の重要な成分であるが、cord factorが強毒菌以外のMycobacteriumや近像細菌に広く分布することや、最近では空洞形成アジュバントとして重要な役割を果すことが明らかにされ、ミコール酸含有糖脂質の免疫応答調節物質としての機能が注目されつつある。そこで申請者らは、cord factorと類似糖脂質の構造と各種生理活性(マウス致死毒性,肺肉芽腫形成能,免疫アジュバント活性及びマクロファージやリンパ球の活性化能等)について系統的な解析を行ない、各生理活性とそれに必要な構造との関連を明らかにしつつ、結核性肉芽腫の形成機構や新しい生体防禦調節物質をみいだそうと考えた。 2年度にわたって行なった本研究で、各種抗酸菌Mycobaclerium,Nocardia,Rhodococcus,Gordona等の菌種から、新しいタイプのミコール酸を含むcord factor類縁物が多数見出されたこと。そのミコール酸分子種組成はGCIMSにより明快に解析されたこと。cord factorや類縁糖脂質の多くは、マウス肺に顕著な肉芽腫を形成し、その必須構造が明らかとなったこと。In Vitroにおいてもマクロファージを強く活性化すること。Sarkoma180やMethA等固型腫瘍に対する退縮効果も強力に認められること、等が明らかとなった。 このことから、これらの基礎研究をふまえて、ミコール酸含有糖脂質の抗腫瘍剤としての有用性や、非特異的感染防禦能治療剤の開発、さらには新しい強力ワクチンの開発等の応用研究も発展させてゆきたいと考えている。
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