研究概要 |
R100因子のTraT遺伝子を含むプラスミド断片を挿入したpUC19プラスミドをE, coli, K12, W3110に導入した株を東京大学応用微生物研究所大坪栄一教授の御好意により得た. この株は, W3110に親プラスミドpUC19のみを導入した対照株に比べて補体抵抗性であった. TraT蛋白のアミノ酸配列から(86〜99)ペプチド断片を化学合成したものをペプチド研より入手し, これをKLHに化学結合したものを免疫原として, マウスモノクローナル抗体を作製した. 得られた抗体は, SPS-PAGEのTraT蛋白をWesternblot法によって認識したが, 生菌上や膜標品中のTraT蛋白とは反応しなかった. しかしこの抗体により抗原の検出が可能となり膜標品からTraTの分離精製が追跡出来る様になり, この様にして精製したTraT蛋白を抗原として更にモノクローナル抗体を作製し, 6種の抗TraTモノクロナール抗体を得た. これらの抗体は, Westernblotのみでなく生菌上や膜標中のTraT蛋白とも反応した. これらの抗体は, 今後, 補体抵抗性腸内細菌の分離同定に大きな効果を挙げるものと期待出来る. 更に, これらの抗体を用いてRadioimmunoassayを考案し, それを用いてTraT蛋白の精製法を再検討し, 膜標品をオクチルグリコシドで可溶化し, DE52及びCM59セルロースカラムを用いるイオン交換クロマトグラフィーを行なうことによりTraT蛋白を精製する方法を考案した. 精製TraTを用いて, 今後,補体活性化経路の如何なる段階に如何にTraTが抑制効果を発揮するかを追及して行きたい.
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