研究概要 |
HINI型インフルエンザウイルス血球凝集素(HA)の遺伝子RNAよりCDNAをクローニングし、SV40の後期プロモーター下流に接続した。T抗原領域に欠損をもつウイルスdl1055をヘルパーとしてCV-1細胞よりSV-HAウイルスを回収し研究に用いた。SVHAウイルスをCV-1細胞に感染するとHAが産生され、HAはゴルジを経て細胞膜上に突出した。このHAの抗原性を5種類の異なった単一抗体で調べたところ、インフルエンザウイルスのHAの抗原性と一致した。又、このHAは血球凝集能及び細胞融合能を示した。したがってSV-HAより発現されたHAはインフルエンザウイルスにより発現されるものと同質のものであることが確かめられた。このHACDNAの発現系を用いて先ずエピトープの決定をおこなった。エピトープ264は1977年から1978年にかけてインフルエンザウイルスの抗原変異に重要な役割を果したと考えられているが、エピトープの位置は単一抗体変異株によっては正確にきめられなかった。いくつかのアミノ酸がエピトープに含まれると考えられてはいたが確証はなかった。我々はHACDNAをM13のファージDNAに組み込み、部位突然変異法によってアミノ酸変化をひきおこす変異をHACDNAに挿入し、上述の発現系でもってこの変異DNAを発現させ、螢光抗体法によって単一抗体264との結合活性を検討した。その結果、189,190,219番目のアミノ酸がエピトープ264に含まれること。以前考えられていた225,227番目のアミノ酸はこのエピトープに含まれないことが明らかになった。次に、この手法を用いて血球凝集能活性をもつ部位を検策し、226番目のアミノ酸を欠損させる変異DNAの発現によって得たHAは血球凝集活性を失なうことが明らかになった。
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