研究概要 |
ウイルスの細胞への感染初期過程はウイルス粒子表面蛋白と細胞膜成分との間の連鎖反応で、大畧,吸着と侵入に区別されているが、その詳細については不明である。我々はワクチニアウイルスの感染成立に必須な機能が少くとも5種類あって、それぞれ別々のウイルス粒子外層を構成する蛋白に担われていることを、ウイルス中和活性をもつモノクローナル抗体を用いた解析により明らかにした。VP34K,VP32K,VP29Kは活性部位がウイルス粒子表面に露出していて、吸着過程に関与すると思われるが、VP34Kの活性はウイルス粒子のフォスファチジルセリン含量に依存する性質があり侵入過程にも関っているらしい。VP54Kは蛋白分解酵素処理、又は細胞膜との相互作用を経て41Kとなり粒子表面に露出して来る。VP17K-25Kの露出機構は不明である。これらの埋伏されている蛋白は吸着に関与しないであろう。 ウイルス表面蛋白が宿主細胞のどの細胞膜成分と、どのように反応するかを知るため、新しい研究方法を開発して検討をはじめた。精製したウイルス宿主細胞の細胞膜に対し、抗体を作成して、ウイルス中和活性をもつモノクローナル抗体と反応する分画があることを知った。この分画をアフィニティクロマトグラフィにより単離することに、抗VP32Kモノクローナル抗体を用いて成功した。この分画はウイルス中和活性をもつモノクローナル抗体とイデオタイプ特異的に反応するので、細胞膜にウイルス蛋白と特異的に反応するレセプターがあって、中和モノクローナル抗体と反応するウイルス蛋白とレセプターが、鍵と鍵穴の関係にあることを強く示唆している。したがって、単離された抗細胞膜抗体によってレセプター蛋白の同定が可能となりVP32Kのレセプター蛋白を同定することができた。上記5種類のモノクローナル抗体を材料にして、更に、検討中である。
|