研究概要 |
1.外来抗原とIa抗原の相互作用を更に解析するため、分子量わずか163のチオプロニン(propionyl-glycine)特異的クローン化T細胞株を樹立、またチオプロニンのチオール基やカルボキシル基等を修飾した種々の誘導体を開発した。これら各種誘導体pre-pulse抗原提示細胞によるT細胞株のチオプロニン特異的増殖反応抑制試験の結果等から、チオプロニン上のチオール基がIa抗原との相互作用に重要であろうとの結論が得られた。 2.T細胞による抗原認識機構の解析には、DNA合成やリンホカイン産生の上昇を指標とする方法が用いられてきたが、これらは抗原認識後長時間を経た後の結果を測定する方法である。我々は、より直接的に抗原認識を反映し得る抗原刺激後1〜2秒以内にT細胞に起こる【Ca^(2+)】流入や膜流動性の変化を、蛍光プローブを用いて測定するストップト・フロー法を導入した。azo-benzenearsonate-tyrosine(ABA-tyr)を抗原とした系で解析を進めているが、ABA-tyr,Ia抗原陽性抗原提示細胞,ABA-tyr特異的T細胞の3者が存在したときのみ【Ca^(2+)】流入等が観察され、これ以外の組合わせでは全く観察されない。更に、ABA-tyr誘導体を用いた結果等は、従来のDNA合成やIL2産生の観察で得られた結果とよく一致した。 3.BIO.BRマウス(Thy-1.2)由来の自己Ia抗原反応性T細胞クローンを同系マウス足蹠に移入すると局所リンパ節が腫脹するが、この際、移入した細胞が確かに増殖していることをThy-1.1congenicB10.BRマウスを用い免疫組織学的に証明した。また、これらクローン化T細胞を静脉内より全身投与し、日を追って採血、抗核抗体や抗赤血球抗体の出現を追究した。その結果、クローンによっては投与後6〜10週以後に、抗核抗体を出現させるものがあることが明らかにされた。
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