研究概要 |
1.(1)azobenzenearsonate-tyrosine(ABA-tyr)特異的T細胞クローンやTハイブリドーマ(自己I-A^K拘束性)はI-A^K遺伝子を導入したL細胞を抗原提示細胞(APC)としてもABA-tyrに対し増殖反応やIL2産生を示し, それらは抗原I-A^K抗体で阻止された. (2)この実験で種々のABA-tyr誘導体に対する反応を検討, tyrのα炭素部位のアミノ基とカルボキシル基が重要なことが再確認された. (3)より直接的にT細胞の抗原認識を反映する, 抗原刺激後2秒以内にT細胞に起こるCa^<2+>の細胞内流入や膜流動性の増大を蛍光プローブを用いstopped flow法で追究した結果, I-A^K遺伝子を導入したL細胞, Ia^K抗原分子を組込んだリポソームをAPCとして用いても, T細胞はABA-tyrに急速に反応, Ca^<2+>の細胞内流入や膜流動性の増大を示し, これらは抗I-A^K抗体で阻止された. この結果は(1)とともに, 外来抗原とIa抗原分子の存在がT細胞の抗原認識に必要かつ十分条件であることを示す. なお, この実験系でも(2)と同様な結果を得た. (3)ABA-tyr特異的T細胞, ABA-tyr, APCの3者の中, 2者をまず混合, 次にもう1つを加えた後のT細胞内へのCa^<2+>流入のrate constantを種々の組合せにつき測定したがいずれの組合せでも同じであった. この場合, ABA-tyrのABAあるいはtyrを誘導体としたものを加えてもABA-tyrと拮抗しなかった. これらの結果はT細胞レセプターの抗原認識にはIa抗原とABA-tyrが予め安定な複合体を形成する必要はなく, 3者が会合してはじめて安定な複合体が形成されることを示す. 2.自己Ia抗原反応性T細胞クローン株の中には, 同系マウス皮下に投与すると自己免疫病とされている扁平苔癬と同様な病変を起こす株, GvH反応と同様に所属リンパ節の腫大を起こす株, 同系マウスにi.v.投与で抗核抗体や抗自己赤血球抗体を出現させる株があった. これらクローン株を用いて自己免疫病の発病機構を追究中である.
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