研究概要 |
日本人に最も多い悪性新生物である胃癌は、現在減少傾向にあるが、その原因には多くの未解明の問題が残されている。癌以外の成人病についても多くの病態学的ならびに予防医学的研究が求められている。 本研究では第一に、胃癌患者の病態と血液中および組織中微量元素または生体過酸化反応関連金属酵素の動態との関係を明らかにし、次いで、糖尿病,肝疾患などの他の成人病についても同様の検討を行なうことを目的とした。 本年度は、胃癌を中心として病態と活性酸素代謝関連金属酵素の動態を詳細に検討するために以下のような実験を行なった。 1.人赤血球より、Superoxide dismutase(SOD)をFridorichらの方法に準じて精製した。精製したSODを家兎に免疫し、抗SOD血清を得た。2.昨年度に採取した胃癌患者の血液資料より年齢,症度(1〜4),転移の有無および性差を考慮して、42名を選び、SOD,Glutathione peroxidase(GSH-Px),Catalase(CAT)活性および酵素量の測定を行ない、症度および転移の有無により分類し検討した。3.糖尿病患者においても同様の測定を行なった。 その結果、(1)胃癌患者の赤血球中SODは、症度,転移の有無,性差に関わらず、酵素活性および酵素量ともほぼ一定の値を示し、正常人との間に有意な差は認められなかった。(2)赤血球中CAT活性では、症度2または3の患者群は、正常人に比較して有意の活性上昇が認められたが、転移の有無および性差による変動は、認められなかった。(3)赤血球中GSH-Px活性は、症度,転移の有無によらず正常人に比較して有意に低く、また同時に測定した血漿中GSH-Px活性は、有意の上昇を示し、症度の高いもの,転移の多いものほどその傾向は、著しかった。(4)糖尿病患者においては、赤血球中SOD,CAT,GSH-Px活性の有意な増減は認められなかったが、血漿中GSH-Px活性が上昇を示した。
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