研究概要 |
成人病が多い地域として滋賀県湖西地区農村を選び、成人病検診の際女性108名(平均年令49.4才)を対象に検尿,身体計測,血圧測定など成人病検査の他に3日分の食事内容を記人法により調査し、あわせて上記項目以外に32種の血液検査および3種の尿検査を実施した。食事調査からCa,P,Fe,Na,K,Zn,Mg,Mn,Cuの9種の無機質摂取量をパーソナルコンピューター用プログラムを用いて算出した。これら9種の無機質摂取量と各種検査値との関係について統計的解析を加えた。血清無機質量はNa濃度は99%,K濃度は86%,Ca濃度は90%,Cl濃度は96%,P濃度は94%の人が正常値を示した。又Caでは10%,Pは7%,Feは13%の人が低値を示した。一方食事調査から求めた無機質摂取量には個人による変動が著しく大きかった。無機質摂取量と血清無機質濃度との相関を見ると、特にCa摂取量と血清Na濃度と強い負の相関がみられた。本調査では同一の無機質摂取量と血清濃度との相関はみられなかったが、むしろ他の無機質との相関がみられたことは、血清無機質の低下がみられても当該の無機質だけの不足を考えるのではなく、他の無機質摂取量の異常も考慮する必要があることを示している。血清無機質濃度や無機質摂取量と臨床検査値との相関ではCa濃度と血圧との間に正の相関がみられた他、Na濃度とトリグリセリド,コレステロールと正の相関,Fe濃度とHDLコレステロール,コレステロールとの正の相関,Na摂取量とコレステロール,β-リポプロテインと正の相関がみとめられた。その意義については今後の検討が必要である。さらに栄養状態の極めて悪いタイ国東北地区の農村で同様の研究を行った結果、タイ国住民は血漿,K,P,Fe濃度が低値を示し、無機質の栄養状態の良くない事が示唆された。臨床検査値との相関をみるとかなり日本人の場合とは異なっていた。今後種々の栄養摂取レベル別に臨床検査値の相関について検討を加えた。
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