研究概要 |
アオウキクサは古くから、数々の利点を持つ実験用植物として、植物生理,生態,分類学の各面での研究が進んでおり基礎データが完備しているので、公衆衛生・環境衛生学への応用が最も容易な材料のひとつである。本研究は重金属をはじめとする水環境汚染物質のアオウキクサによる濃縮蓄積とそれによるアオウキクサの増殖能・形態形成変化を観察し、汚染物質貯留タンクとしての植物の役割、生物指標としての役割を明らかにし、併せて各種汚染物質のリサイクル及び生体内動態に関する知見を得ることを目的とする。 1.重金属のアオウキクサへの吸収と蓄積:昨年度に引き続き、鉄が他種重金属吸収蓄積において果たす役割を検討し、鉄吸収が十分行なわれているか否かが、アオウキクサ増殖・生長・形態形成を左右していることが示された。アオウキクサに毒性を発揮する重金属の多く(銅を除く)は、鉄吸収を阻害する働きをしていることも明らかとなった。 2.アオウキクサの重金属耐性獲得:アオウキクサに増殖阻害をもたらさないような低濃度の銅又はカドミウム(約0.01ppm)で長期間培養したアオウキクサの、銅,カドミウムに対する感受性を調べた処、カドミウム前培養によって、銅,カドミウムへの感受性が著しく低下することが示された。銅前培養ではこの現象は見られず、又、カドミウム,銅の体内濃度は双方共同じであることから、カドミウムにより特異的に生体内で重金属無毒化の機構が形成されるものと推察される。(Sattellite Symposium of the IVthInternational Congress of Toxicology にて発表。) 3.その他汚染物質のアオウキクサにおける毒性発現:農薬類,有機溶剤類は種類によって異なるが1-100ppmの濃度でアオウキクサを枯死せしめる。それらの毒性発現機構は今後更に検討を行なう。
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