研究概要 |
慢性腎機能低下(慢性腎不全)患者では、原因の如何に拘らず腎機能が進行性に増悪する。しかし、その増悪因子は確定されていない。増悪因子としてはPTH,高血圧,アラキドン酸代謝産物,リン,カルシウムなどが考えられており、その増悪因子を解明し治療することが透析患者数の減少につながる。初年度の60年度では種々の腎疾患での腎機能悪化速度について検討を行ったが、第2年度の61年度ではさらに発展させ甲状腺ホルモン,ロイコトリエンの関係につき検討した。臨床研究では慢性糸球体腎炎および多嚢胞腎患者のPTHおよび甲状腺ホルモン(free【T_4】,total【T_4】,【T_3】RSU,TBG)を測定し、腎機能悪化速度(Crの逆数の減少率)との相関につき検討した。PTH,total【T_4】,【T_3】,【T_3】RSU,TBGに関しては相関を認めなかったが細胞内甲状腺機能を反映すると考えられているfree【T_4】と腎機能悪性速度に相関を認めた。つまり、free【T_4】が1ng/dl以下になると腎機能悪化速度が急速になることが判明した。動物実験では実験腎炎(BSA腎炎)において、リポキシゲナーゼ阻害薬を投与したところ蛋白尿の減少が認められた。このことから、ロイユトリエンが腎糸球体基底膜の障害に関与することが示唆された。さらに研究を進めるため、現在尿中ロイユトリエンの測定について基礎実験を行っている。今だ世界で尿中ロイユトリエンの測定は行われておらずこの測定法が確立されれば、患者尿中ロイユトリエン濃度と腎機能悪化速度の関係が解明される。 第2年度における研究の成果は、甲状腺ホルモンが腎機能悪化に関与していること、および、プロスタグランディン関連物質であるロイユトリエンが腎糸球体障害作用をもつ可能性が示唆されたことである。
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