研究概要 |
非A非B型肝炎ウイルスについてはこれまでの疫学的研究ならびに動物への感染実験の成果より、少くとも3種類以上存在する可能性のあることがほゞ確実と考えられている。しかし現段階ではそれらのいずれも発見されておらず、またそれと関連した抗原抗体系も確立されていない。そこで本研究者らは非A非B型肝炎ウイルスについて、従来主として血清学的あるいは免疫学的な方法によりその発見への努力がなされてきたのに対して、患者の肝細胞あるいは白血球を培養することにより、潜伏性の形で存在しているウイルスを増殖化させて検出する試みを行った。この方法によっては現時点の成果ではなお非A非B型肝炎と関連すると考えられるウイルス様構造物はみられえなかった。今後は各種の培養液,培養條件をさらに工夫して検討していく必要がある。つぎに非A非B型肝炎の臨床病理学的研究成果については、これまでの疫学的調査と同様、散発性の非A非B型肝炎の頻度は急性ウイルス肝炎例中の約40%を占め、60年,61年度ともにA型,B型肝炎よりも高率であった。輸血後肝炎例においてはその全例が非A非B型肝炎であった。散発性および輸血後肝炎例ともに慢性化例の頻度が高いことは従来報告してきた通りであるが、今回の研究では、発症後3年経過後においても肝機能検査に異常がみられる例においては、その後の経過観察においても肝機能検査が正常化する例は稀にみられるにすぎなかった。慢性肝炎例においては、B型に比べ非A非B型肝炎例では肝機能検査および組織学的所見の面においても改善例は少なかった。しかしごく一部の例を除いては急速に肝炎より肝硬変に進展する傾向は認められず、急性期より経過を観察しえた症例中では1例が約4年後に肝硬変に進展しているのみであった。今後これら症例について経年的に経過を観察していく必要がある。
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