研究概要 |
これまでの研究で慢性肝炎患者末梢単核細胞(PMNC)のmitogen(PHA)刺激培養上清中に線維芽細胞増殖因子(FPF)が存在し、分子量20000と60000(前者のaggregate)でPI.5.1に主峰を認め、いずれもIL-1である可能性が高いことを述べてきた。今回は更に物理化学的性質並びに生物活性を解析し、肝線維化における免疫学的機序についても検討することを試みた。まず、trypsin,neurminidase、加熱処理に対する安定性を検討したところ、本FPFはいずれの処理にも易失活性であり、heat labileな蛋白でその活性発現にsiclic acidの存在が必須であると考えられた。FPFのtarget cell specificityを調べた結果、IMR-903T6などの線維芽細胞のみに活性を示し、M7609、HMVなど悪性腫瘍樹立細胞株には増殖活性を認めなかった。ところで、前年度にPMNCのPHA刺激培養上清がFP活性を示すことを述べたが、生体にはPAHのようなmitogenは存在せず、慢性肝疾患では肝炎ウィルス、肝細胞膜抗原、肝特異抗原(LSP)等が単核球を刺激することが想定される。そこでLSPを抽出しCAH患者単核球活性化作用を検討したところ、明らかにFP活性を有しており、生体内でもFPFを産生することが実証された。更にこのIL-1と考えられるFPFの産生細胞について検討するために、慢性肝炎・肝硬変患者の未梢血マクロファージをLPSで刺激した培養上清中のFP活性を測定したところ正常人でのS,1.13±0.13に対し慢性肝炎1.60±0.34、肝硬変1.61±0.15と高値を示し、これらの疾患では患者マクロファージは感作された状態にあり、正常マクロファージに比べてより多くのFPFを産生すると考えられた。つまり慢性肝炎、肝硬変ではLSP等の抗原により感作・活性化されたリンパ球がおそらくはmacrophage activating factorを介してマクロファージを刺激し多量のIL-1を放出させた結果、線維芽細胞の増殖ひいてはコラーゲン合成の増加を引き起こし線維化の進展をもたらすと想定された。
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