研究概要 |
呼吸調節系における遺伝と環境の影響を末梢化学受容器におけるそれと、中枢化学受容野におけるそれとに分離評価する目的で、24才以上の健康な一卵性双生児(MZ)9組と二卵性双生児(DZ)7組を対象に、normocapnic progressive.hypoxia法による低酸素換気応答検査,hyperoxic progressive hypercapnia法による高炭酸ガス換気応答検査,およびwithdrawal testを施行し、遺伝の影響およびその標的部位について検討した。また、低酸素と高炭酸ガスが併存するとき内因性オピオイドが呼吸調節系に関与しているか否かを検討する目的で、内因性オピオイドレセプター括抗薬であるナロキソン静注前後にhypercapnic progressive hypoxia法による低酸素換気応答検査を施行し、低酸素換気応答値の変化に対する遺伝の影響を検討した。その結果、1)normocapnic progressive hypoxia法による低酸素換気応答値,高炭酸ガス換気応答値,およびwithdrawal testにおいて中枢での【CO_2】-【O_2】相互作用と低酸素による抑制を表す指標には遺伝の影響がなかったが、末梢化学受容器における【CO_2】-【O_2】相互作用と低酸素感受性を表す指標には遺伝の影響が認められた。すなわち呼吸の化学調節系の遺伝因子の標的部位として末梢化学受容器が主であることを明らかにした。2)MZおよびDZあわせて16組から無作為に兄弟の片方を選び、計16名について、hypercapnic progressive hypoxia法による低酸素換気応答はナロキソン静注後有意に増大した。ナロキソン静注前後におけるこの低酸素換気応答の変化には遺伝の影響が認められた。また、この事実は内因性オピオイドが呼吸調節系に関与していることを示すものである。
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