研究課題/領域番号 |
60480219
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
山本 悌二 東北大, 医学部, 助教授 (10106487)
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研究分担者 |
岩崎 祐三 東北大学, 医学部, 教授 (00142927)
今野 秀彦 東北大学, 医学部, 助手 (10091688)
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キーワード | 運動ニューロン疾患 / 筋萎縮性側索硬化症 / 軸索流 / 血液脳関門 / 血清蛋白 |
研究概要 |
昨年度、末梢神経から有毒レクチンやアドリアマイシンを投与すると逆行性軸索流によって脊髄前角細胞に輸送され、運動神経細胞は選択的に変性に陥ることを明らかにした。これは運動ニューロンの生存が逆行性軸索流によって運搬される物質によってコントロールされうることを意味している。それより運動ニューロン疾患の発症機序として、神経筋接合部から逆行性軸索流によって輸送される物質が鍵を担っていることが強く示唆された。運動ニューロンは血液脳関門によって保護されているにもかかわらずその軸索は広く末梢に分布している。本年度は、様々な血清因子が運動ニューロンに取り込まれていて、そのなかには運動ニューロンを変性させるものが含まれているのではないかと想定し、ラット運動ニューロンに果して血清成分が取り込まれているか検討した。驚くべきことに、脊髄前角細胞には免疫組織化学的に多量の血清蛋白,アルブミンとIgGグロブリンが末梢神経から取り込まれていることが判明した。これは運動ニューロン疾患の成因を考えるうえで非常に重要な所見と考えられた。一方、神経細胞は発育途上で過剰に産生され、不要なニューロンはすみやかに変性脱落し(神経細胞の自然死)、運動ニューロンでも同様の現象が証明されている。Werdnig-Hoffmann病はこの過程が病的に過剰に現れたものとする考えも強い。神経細胞の自然死の同定は容易でなかったが今回Fink-Heimer法により鮮明に同定されることを見いだした。しかも、本疾患に特異的とされる脊髄前根のグリア束が有毒レクチンによる運動ニューロン変性に続いて形成された。また、神経筋接合部基底膜に特異的な糖蛋白が軸索流により取り込まれている事実を見いだし、その運動ニューロン疾患における役割と治療の可能性の研究に着手した。
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