研究概要 |
脳循環調節機構の重要な因子である脳血管の自律神経支配に関し、昨年度の研究において我々は血管壁自律神経終末が幾つかの種類に分かれる可能性を示したが、本年度は酵素抗体法を用い、ネコの中大脳動脈(MCA)及び脳底動脈(BA)におけるvasoactive intestinal polypeptide(VIP)含有神経終末を光学顕微鏡及び電子顕微鏡下にとらえることに成功した。またさらに分布について定量的に検討した。 酵素抗体法にはまず抗VIP兎血清IgG、次いでhorseradish peroxidese結合抗IgG山羊血清を反応させる間接法を用い、diaminobenzidineで発色反応を行った。光顕では、ビーズ状に染色された神経線維が外方から侵入し血管中膜に近接して存在しているのが観察された。電顕では、VIP陽性神経終末はosmiophilicな粒子が集積して沈着していることにより同定され、血管外膜内にVIP陰性神経終末と共に存在していた。さらにその分布に関する基礎的情報を得る目的で、中膜筋層外縁からVIP陽性終末までの距離を画像解析装置を用いて各ネコにつき無作為に30ずつ計150こ測定した。結果は、MCAで1.41±0.10μm,BAで4.78±0.47μmであり、これは我々が既に求めたdense cored vesicle含有終末の各7.64±0.39,10.12±0.48μm,clear vesicle含有終末の各10.22±0.52,12.42±0.90μmに比し有意に小であった。またBAに比しMCAで有意に小であった。さらにヒトトグラムでみると、1μm以下のものが多く筋層から離れるにしたがって少なくなるが、筋層内にまで入り込むものはなかった。 以上より、多種の神経伝達物質もしくは神経伝達修飾物質が注目される中で、VIP含有神経終末は筋層に最も近接して存在しているもののひとつであり、脳血管の自律神経支配に重要な役割を担っている可能性が示唆された。特に内頸動脈系で支配が密であることが推測された。
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