研究概要 |
近年IL3が多能性幹細胞の分化,増殖に深く関与することが動物実験において解ってきたが、ヒトの多能性幹細胞に対する造血刺激因子は殆ど知られていない。またマウスの肥満細胞は存在部位により組織型肥満細胞(CTMC)と粘膜型肥満細胞(MMC)に大別されるが、CTMCの性質の有する肥満細胞の培養系は確立されていない。本研究では、マウスにおいてはCTMCの性質を有する肥満細胞の培養系の確立とIL3以外に多能性幹細胞に対する造血刺激因子が存在しないかどうか、ヒトにおいてはPHALCMならびに小児再生不良性貧血患者血清を用い、ヒト多能性幹細胞に対する造血刺激因子が存在するかどうかなどについて検討した。主な結果は次の通りである。(1)脾細胞をPWMSCM,WEHICM,pure IL3の存在下に培養すると、混合コロニーの形成が認められるが、その反応性はまちまちであり、IL3以外にも多能性幹細胞に作用する造血刺激因子が存在する可能性が示唆された。(2)マウスの腹腔細胞培養では、2つの異ったタイプの肥満細胞コロニーが形成されることが証明され、タイプIコロニーはCTMCの性質を有していた。(3)PWMSCMには、従来知られているIL3以外に肥満細胞刺激因子が存在することが確認され、DEAE-セルロース クロマトにてIL3と簡単に分離可能となった。(4)単細胞培養を用いてPHALCMをヒト未分化幹細胞に作用させると、 ヒト未分化幹細胞もStochasticに分化増殖するものであり、PHALCM中にはヒト未分化幹細胞に対する増殖刺激因子が存在することが示唆された。(5)小児再生不良性貧血患者血清中のBPA活性は、分子量65,000前後と35,000前後の2カ所に存在することが判明した。
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