研究概要 |
2',5'-oligoadenylate(2-5A)synthetaseはinterferon(IFN)で細胞内に誘導される酵素であり、IFNによる抗ウイルス作用,細胞増殖の抑制,分化の調節などに関与すると考えられている。同酵素は2重鎖RNAの存在下で、ATPより2-5Aという特殊なnucleotideを生成する。2-5Aは細胞内RNaseを活性化し、mRNA,tRNAなどのRNAを破壊する。以上のメカニズムにより、IFNの上記作用の発現に関与していると考えられている。ところで、生体のウイルス感染防御機構として、抗体,細胞性免疫による特異的防御機構とともに、IFNで代表される非特異的防御機構が重要な位置を占める。このウイルス感染防御機構の破錠した病態として、免疫不全症があげられる。我々は、免疫不全症の中でもその発症メカニズムが比較的よく研究されているadenosine Neominase(ADA)欠損重症複合免疫不全症(SCID)におけるウイルス易感染性の生化的機序を明らかにするため、ADAをdeoxyioformycin(dCF)で阻害した培養細胞を用いて、ウイルス感染防御に関与するIFN誘導酵素,2-5Asynthetaseの活性を検討した。ADA欠損SCIDのモデルを再現するには、ADAの基質であるNeoxyadenosine(dAdo)を培養液中に添加する必要もあるが、そのdAdoの濃度変化による2-5A synthatase活性の推移を測定したところ、dAdoの濃度に依存して2-5A synthetaseのinhibitorが生成された。このinhibitorは、2-5Aの分解酵素である2'-phosphodioctaraseでも、2-5A synthetaseの基質であるATPを競合的に阻害するdATPでもない。このinhibitorは分子量が3万以上で、56℃30分の熱処理で不活化されるため、何らかの蛋白質と考えられる。また、その誘導には、ADA阻害dAdo添加細胞内に生ずるDNAのメチル化阻害が関与することが推測された。そして、このことがADA欠損SCIDのウイルマ易感染性の一要因となっていることが考えられる。
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