研究概要 |
脳波, 心拍変動, 姿勢などの制御系の揺らぎ現象に自己回帰モデルを応用した解析を施し, そのなかに潜む動的活動の年齢特異性を明らかにすることを目的として, 昨年度にひきつづき次の実績をえた. 1.脳波解析による正常小児脳機能の発達現象に関する研究 小学校, 幼稚園の小児876名(男子439名, 女子437名)を対象として左右前頭, 中心, 教頭各部より脳波を単極導出, 磁気記録し, 自己回帰解析を応用したパターン識別法を用いて男女間の脳波を比較した. その結果, 6歳と10歳の右側前頭部に1%の危検率で有意差がみられ, この年齢群の脳機能の発達に性差がみられることを知った. 次に, 新生児脳波の2次元脳電図を求め, 静・動睡眠期で2次元脳電図パターン識別を行った所, 1%の危険率で静睡眠期優位に後頭部に有意差のあることが明らかになった. また, 教室で開発した連続的脳機能モニターシステムで受胎後31週から脳波に律動性がみられることを明らかにした. 2.直立姿勢調節制御の解析と, その発達特性に関する研究 昨年にひきつづき直立姿勢動揺の前後軸, 左右軸に自己回帰析を施し, パターン識別法を用いて正常健康11歳と12歳との差を検討した所, 開・閉眼時において前後・左右ともに1%の危険率で有意差がみられ, 年長児でも立直姿勢に有意の発達がみられることを知った. 3.心拍変動の揺らぎの解析と, その発達特性に関する研究 昨年にひきつづき, 新生児心電図のRR間隔時系列に自己回帰・要素波解析を施し, 新生児心拍周期制御活動の発達を知らんとして, 静・動睡眠期におけるパターンを比較した. その結果, 静睡眠期では受胎後34週で体温, 血圧, 呼吸の影響が明らかになるのに対して, 動睡眠期では受胎後40週ではじめて3つのピークが認められた.
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