研究概要 |
本態性高血圧症の成因, 高血圧維持機構解明を血圧調節ホルモンの相互作用と食塩(Na)を中心とした電解質摂取量との関連から内分泌学的に行うことを目的とした. 本研究遂行のため(1)レニンの直接RIAの開発(2)食塩バランスとカテコラミン, レニンーアンジオテンシン系, プロスタグランディン, 心房性Na利尿ペプチド(αhANP)(3)カリウム負荷による降圧機序(4)カルシカム負荷による降圧機序(5)ジギタリス様Na利尿因子の解明を主たる目標とした. 〔結果〕ヒトレニンの直接RIAは臨床応用可能なものが完成したが得られた抗体は総レニンを認識するものであり, 活性型レニンの抗体作成が問題として残された. 本態性高血圧症患者において無塩食, 増塩食のバライススタディを行い, 血圧の変動と各種ホルモンの変動を検索したところ, 本症患者ではNa負荷によりノルアドレナリンの抑制低下, PGE_2産生の不応が認められ, レニン活性, 血中PGE_2の間に不均衡が認められた. カリウム負荷による降圧は食塩感受性と相関し, KによるNa代謝の変化にPGE_2が関与していることを明らかにした. Ca負荷8週間により高齢者の高血圧は有意に降圧し, この降圧には交感神経系の抑制, PTHおよびVitP3の抑制が関与し, 細胞内Ca^<++>の上昇が高血圧の維持に重要な機作であることを裏づけるものである. Na代謝に重要なhANPは本症患者に増塩負荷を2週間にわたり行ったところ1週後を負荷とする上昇反応を示し, 1, 2週後のαhANP変化率は尿中Na排泄量と正相関, PRAと負の相関を示した. さらに2週後の血圧変化率とは正相関を示し, 慢性期の血圧値を修飾している可能性が強い. 血中ウアバイン様因子は増塩により上昇し昇圧度, Na排泄量と正の相関を示し, 高血圧患者で高値を示した. 本物質は精製の段階にあるが不安性脂質と考えられ, 分子量約530の物質であることが判定し, 現在同定の方法を検討中である.
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