研究概要 |
HTLV-I感染白血病細胞の特性、heterogeneity・形態異常発現の機序,薬剤感受性,感染予防に関する基礎的データを得るために成人T細胞白血病患者から、白血病細胞の継代培養株樹立を試みた。急性型ATLの患者末梢血細胞から2株,慢性型ATL患者末梢血から4株の株細胞を樹立した。 1)細胞表面抗原は、OKT4(+),OKT11(+),DR(+),IL-2R(+)のものが2株,OKT11(+),DR(+),IL-2R(+)のものが2株,DR(+),IL-2R(+)のものが2株である。これらの株細胞の中で患者の末梢血中の白血病細胞と同じ表面マーカーを有しているものが1株得られた。 2)ATLの治療に関する基礎データを得るため、株化細胞を用いて薬剤感受性試験を実施した。5'DFUR,VP16,SM108,グリチルリチン,サイクロフォスファマイド,OK432を使用したところ、グリチルリチンがすべての細胞に細胞増植抑制作用を示した。ATL治療薬としての可能性もあり、基礎実験実施中である。 3)市販されている抗リンパ球血清(アールブリン,ブレスイムーン)が、in vitroで新鮮ATL細胞に強い殺細胞効果を示した。ATLの病型,病態によっては治療に使用できるものと考える。 沖縄県下一般健康成人(平均年齢57.9才)の抗ATLA抗体陽性率は21.0%と高率を呈している。このような環境下でHTLV-I感染と疾病との関係を知る目的でSLEと精神分裂病患者の抗ATLA抗体陽性率を検索した。1)SLE患者51名(男性5名,女性46名,平均年齢32才)の陽性率は11.8%であった。これは同年齢層の一般健康人の15.1%と比べ有意の差はなかった。2)精神分裂症患者151名(男性54名,女性97名,平均年齢42.1才)の陽性率は14.6%であり、同年齢層の一般健康人の17.4%と比較し、有意の差はなかった。
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