研究概要 |
1.HTLVーI感染状況の追跡調査をした. 1)ハワイ在住沖縄県出身者の出生地別陽性率は, 沖縄生まれ25.3%,ハワイ生まれ16.9%と沖縄県生まれが高率であった. これら受診者の中には2度の検診を受けた者がおり, 55才,65才,82才の3人の女性に蛍光抗体法で陽転化が確認された. 2)男女間に著しい差のあった沖縄県内T地区を再検した. 1984年男性20.6%,女性52.3%という陽性率を示した. 1987年の再検では, 男性27.0%,女性54.2%であり, 約30%の男女間の陽性率の差には変動はなかった. 男女間の著しい差の原因がどこにあるのか検討を要する. 2回の検査で女性2人の陽転化が確認できた. 72才と78才の高令女性である. ハワイ在住者の陽転化例とも合わせ, HTLVーI感染後抗HTLVーI抗体産生の時期及び機序を解明する必要がある. 2.ATL患者由来の株化細胞及び新鮮ATL細胞の各種葉剤に対する感受性をDNA合成阻害率で調べた. 3′Azidoー3′Deoxythymidine(AZT),Glycyrrhizin,2′ーDeoxycoformycin(dcF),Desferrioxamin Bはin vitroで,doseーresーponsiveに増殖抑制を示した. ATLの治療薬剤としての検討が望まれる. 3.難治性ATLに対して抗リンパ球グロブリン(ALG)による治療を試みた. 種々の化学療法が無効で,骨髄抑制,敗血症,強度の口内炎, 舌潰瘍を合併し, 全身状態悪化のため, 通常の化学療法が行い得なかった急性型ATLに対して,ALG1,000mgを連日点摘静注した. 投与8日目までは末梢血白血球数の増加を抑制できたが, 13日目には増殖抑制不能となった. しかし, この間著明な全身状態の改善を見たため, 化学療法を施行し得た. 重篤な合併症を有する難治性ATLの治療にALGの使用は有効な一方法と考えられる.
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