研究概要 |
ATLの発症に関連しているHTLV-Iに対する抗体陽性者は, 沖縄県下健康成人の8〜21%に達し, 著しい地域差の存在が判明している. 1.我々は濃厚汚染地域と考えられる沖縄本島中部東海岸地方のHTLV-Iの伝播状況を調査し, キャリアーの長期追跡を開始した. 対象とした地域の陽性率は36.9%と高く. 区域によっては50%という所もあった. これまでに2回の検査を受けた者の中に72才, 78才という高齢女性に陽転化が確認された. 2.HTLV-I伝播経路を知る目的でハワイ在住沖縄県出身者の陽性率を調査した結果17.6%と高く, 沖縄県内の同年令層の陽性率と有意差はなかった. 3.HTLV-Iキャリアーの免疫学的反応性を検討した. 末梢血リンパ球(PBL)のPHA,ConAに対する反応性は, 非キャリアに比べて有意に低下していたが, PWMに対しては差はなかった. Spontaneus ^3H-Thymidine uptakeは非キャリアに比べ有意に高く, HTLV-I感染細胞は増殖傾向を示していることが考えられる. K562をtargetとしてNK活性を測定すると, 非キャリア13〜38%, キャリア9〜34%, ATL患者1〜13%であった. キャリアノ中に著しく低値の者がおりATL発症との関係において経過を見る必要がある. 4.急性型ATL患者末梢血細胞から2株, 慢性型ATL患者から4株の株化細胞を樹立した. これらの中で新鮮白血病細胞と同じ表面抗原を有するものが1株得られた. 5.ATL治療に関する基礎データを得るために, 株化細胞及び新鮮ATL細胞の種々の薬剤に対する感受性をDNA合成阻害率で測定した. Azidothymidine(AZT),2Deoxycoformycin(dCF),Glycyrrhyzin,DesferrioxamineBはdose-responsiveに増殖抑制を示した. 治療薬剤としての検討が望まれる.
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