研究概要 |
マウス骨髄細胞を培養すると巨核球コロニーが形成され、その基になる細胞が巨核球系幹細胞(CFU-M)である。CFU-Mの分化増殖には2種の因子、巨核球コロニー刺激因子(MK-CSF)と巨核球増幅因子(MK-POT)が必要とされる。MK-POTはCFU-Mに作用し分化を誘導し、巨核球の成熟を不完全に促し、MK-POTはその後の巨核球の成熟とendomitosisを促す。我々はマウス巨核球コロニーの無血清培養法を確立し、その系に純化したインターロイキン3(IL-3)を添加し、それだけで巨核球コロニーが形成されることから、IL-3がマウスのMK-CSFそのものであることを証明した。さらに、血漿凝塊法で巨核球コロニーの培養を行う際に、エリスロポエチン(Ep)を添加するとそれだけで巨核球コロニーが形成されるが、無血清の培養系に添加しても巨核球コロニーは形成されない。さらに無血清培養系で、EpをIL-3と共に加えると、IL-3単独添加の場合に比べて、コロニー数は増加し、かつコロニーを構成している巨核球のDNA含量が増加する。このことは、EpはMK-CSFでなくMK-POTであることを示している。さらに、清水らとの共同研究で再生不良性貧血患者尿から8段階の過程(熱エタノール処理,DEAEカラム,SP-Sephadexカラム,Phenyl-Sepharose6Bカラム,Sephacryl S-200カラムなど)を経てMK-CSFを純化した。最後に得られたものはスタートのサンプルの20%の活性があり、比活性は100倍になった。SDS-PAGEで分子量26,000の均一な物質であることが証明された。このMK-CSF測定には血漿凝塊法を用いて、マウス巨核球コロニー形成に対する刺激活性を指標とした。そこでこのMK-CSFを無血清培養の培養系に加えたが、コロニーの形成は認められなかった。そこでIL-3と共にMK-CSFを加えるとIL-3単独添加の場合に比しコロニー数は増加した。つまり、このMK-CSFはMK-POTとして作用することを示した。今後このMK-CSFのヒト巨核球コロニー形成に対する影響を検討する予定である。
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