研究概要 |
リュウキュウハブ, ヒメハブ, ニホンマムシ及びヨウスコウマムシ毒をBio Gel P-100でゲル濾過し分画毒の凝固活性の強さを比較したところ, 他の蛇毒はフィブリンクロットを形成するのに15分以上を要するのに対しヒメハブ毒の分画フラクションは5秒以内でクロットを形成した. ヒメハブ毒よりイオン交換クロマトとゲル濾過で2つのトロンビン様酵素(以下TLEと示す)を精製した. TLE-IとIIの分子量は39000と45000であった. これらの酵素はTAME基質にする水解活性を有したが, 血小板凝集活性及びハブ出血因子粗分画(100〜600μg)に対する影響はみられなかった. また, 安定性試験では中性で安定であり, 温度を40度以上にあげると除々に失活していった. in vivoでの実験では450gのラットをウレタンで麻酔後, 左外腸骨静脈より200μgのTLE-IIを注入し, 経時的に右外腸骨静脈より採血を行ないフィブリノゲン(米国ディド社:フィブリノゲン測定試薬), プラスミノゲン(第1化学薬品株式会社:テストチーム^<【O!R】> PLGキット), FDP(帝国臓器株式会社:FDP測定用ラテックス試薬)及びプレカリクレイン(H-D-Pro-Phe-Arg-PNA・Hcl)の測定用サンプルとした. 血漿フィブリノゲン値はTLE-IIの注入前に比べ10分後には40%に, 1時間後には30%に減少したが, 6時間後にはほぼ75%まで回復した. 血清FDP値は注入前の値の2.5μg/mlに比べ10分後には40μg/mlの異常値を示し, 1時間後には20μg/mlとなり, 6時間後には正常値の2.5μg/mlに回復した. 血漿プラスミノゲン値は僅かな増加がみられたが, 血漿プレカリクレイン値には変化がみられなかった. TLE-IIの注入により血清FDP値が著しく増加することから, TLE-IIが血液線溶系に何らかの影響を与えていることが示唆された.
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