研究概要 |
雑種成犬51頭を用いて気管欠損部を補填する方法で気管再建を検討した。補填する内腔組織はvasc uralized flap fasicaを用いれば、移植した気管内腔に繊毛上皮が再生する事がわかった。気管欠損部を気管前壁1/2周切除とし、再建する気管の外枠が半円周状では、いかなる支持体を用いても、残存気管との固定が困難で離解が生じていた。そこで、気管外枠を全周性にして検討した。しかし、気管外枠としての自家耳軟骨は柔らかく強度が保てなかった。自家肋軟骨及び肋骨の骨化部分をエアードリルで除去し、骨膜のみにし、Ring状としての骨再生を4ケ月待ったが硬さは得られなかった。他に適当な硬さを持った気管外枠としての自家物はみあたらない。ハイドロキシアパタイト(以下、アパタイト)は組織親和性が高いとして骨や歯の代用に用いられつつある。そこで、気管外枠としてのアパタイトを用うる事が可能か否か検討した。アパタイトは、科学技術庁無機材質研究所、及びセントラルガラスより入手した。アパタイトをラット36匹の腹部筋肉内に移植し、漸次4,6,8,11週と犠牲屠殺し、光顕的にも電顕的にもアパタイトの組織親和性を観察した。その結果、non-porous及び20〜30umporous sizeのアパタイトは異物反応は少ないものの、アパタイトは被膜にとりかこまれ、外力により逸脱しそうであった。300um及び450um porous sizeのアパタイトも異物反応は無く、pore内に線維組織に埋入し、周囲組織とほぼ一体化した感をうけた。ここにporousなアパタイトほど良いという事がわかった。しかし、pore sizeを増すほど強度は劣化する。今後は、100um,200umのporous sizeのアパタイトの検討を加え、組織親和性と強度とが最も適当と思われるアパタイトを用いて、気管外枠を完成させる予定である。気管外枠が出来れば、気管再建は可能となる。
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