研究概要 |
末梢動脈の慢性閉塞性疾患の自然予後,手術,および薬物療法の適応については一定の見解がえられていない。虚血肢の保存的療法の基準をえるために、虚血側の腰部交感神経節切除術後に運動療法を行なった場合の副交路の増加(局所組織流量)を質量分析法により組織ガス分圧を指標として実験的に定量した。 方法:雑種成犬の一側の内,外腸骨,正中仙骨,および対側の内腸骨動脈を結紮し、同時に虚血側の腰交切を行なった。直後,1カ月後,3カ月後,6カ月後,12カ月後に局所組織流量を測定した。組織流量は、虚血肢を電気刺激により運動させた後の筋【CO_2】分圧の脱飽和曲線を利用して局所血流量計算におけるFickの原理を応用したKetyのクリアランス理論を用いて医用質量分析装置を介してコンピューター処理を行ない計算した。 結果: 腰交切後の虚血肢の局所組織流量は、1カ月後に、11.14ml/100g/min.3カ月後に、15.09ml/100g/min.6カ月後に、15.49ml/100g/min.と増加し、腰交切を追加しない群(昭和60年度)に比して、それぞれ有意な増加を示した。 考察: 腰交切を加えない虚血肢の局所組織流量の改善は、運動療法3カ月後に既に有意に認められ、6カ月,12カ月後では著明な増加は認められなかった(昭和60年度)。本年度の研究でも同様の傾向がみられ、腰交切を加えた場合は、それぞれに有意に増加しており、末梢循環改善の効能に有意に作用することが示唆される。本研究により明らかなように、虚血肢の病態は血管造影による解剖学的情報よりも、機能的な組織循環によって評価されることが生理的であり、虚血肢では、腰交切を加えて運動療法を行なうことが、自然予後に効果的であることが結論される。
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