研究概要 |
末梢動脈の慢性閉塞性疾患々肢の微小組織循環は, 経時的に, 潜在的な副交通枝の発達により改善することを定量し, 腰交切は虚血筋組織流量を僅かではあるが増加させる傾向を示したが有意ではないことを明らかにしてきた. 本年度は, 経時的に増加した副交通枝に対する末梢循環改善剤PGE_1の作用を明らかにするために, 医用質量分析法により, 組織ガス分圧を指標として実験的に組織循環量を定量した. 方法;雑種成犬の一例の内, 外腸骨, 正中仙骨, および対側の内腸骨動脈を結紮して虚血肢を作成した. 筋組織流量は, 静脈維持麻酔下に空気調節呼吸を行ない, 虚血筋電気刺激後のptCo_2の脱飽和囲線を利用して計算した. PGE_1の投与は, 1.2μg/kg/2hrの速さで持続点滴を行なった. 結果, および考案;虚血肢作成後1ヵ月では, PGE_1投与により筋組織流量(ml/100g/min)は, 14.11と非投与群よりも約13%の高値を示した. 3ヵ月後では, 16.48,6ヵ月後では19.3,12ヵ月後には19.7となり, 特に6ヵ月以降では対照値を上回る値を示した. また, 腰交切群では, 1ヵ月後には対照値より約25%の高値を示したが, 3ヵ月以後では非腰交切群とほぼ同様の増加がみられた. すなわち, 腰交切の有無によらず, 経時的に増加した副交通枝に対して, PGE_1は効果的に作用して虚血筋組織循環の改善をみたことが明らかとなった. 本研究によって, 虚血肢の組織循環は, 運動負荷によって発達した副交通枝により改善され, 切迫壊死の症例を除いては自然予後に基づいた保存的療法が長期の予後上効果的であることが明らかになった.
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