研究概要 |
末梢動脈の慢性閉塞性疾患々肢(虚血肢)に対して、直達血行再建術薬物療法、および理学療法が行われているが、自然予後を考えた上での適応に基づいた治療法については一定の見解に達していない。 虚血肢の微小組織循環の経時的変化を定量するために、実験的に虚血肢を作成して、医用質量分析装置を用いて組織ガス分圧を指標として、虚血筋運動後のpCO_2の脱飽和曲線を利用して組織循環量を計算した。 1.自由運動群の組織循環量(ml/100g/min) 虚血肢作成直後,9.51,1ヵ月後,12.41,3ヵ月後,14.59,6ヵ月後,15.11,12ヵ月後,17.19と計算された(正常犬対照,17.75)。 2.腰部交感神経節切除術(腰交切)群の組織循環量(ml/100g/min) 非腰交切群に比して,3〜4%の増加を認めたが有意の増加ではない。 3.末梢循環改善剤(PGE_1)投与群の組織循環量(ml/100g/min) 非腰交切群にPGE_1を投与すると、1ヵ月後に14.11,3ヵ月後に16.48,6ヵ月後に19.13と計算され、腰交切群との差はない。 虚血肢の微小組織循環は、歩行運動により副交通肢の発達につれて改善され、さらに末梢循環改善剤は、発達した副交通肢に有効に作用していることが示唆された。 本研究により、切迫壊死の症例は別として、自然予後に基づいた保存的療法が、長期の予後上効果的であるという適応上の基礎がえられた。
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