研究概要 |
膵がんをはじめ種々の膵疾患に膵広範切除が広く施行されるにつれ, 術後の機能障害に対する対策が急務となっている. そのために切除後残膵の機能的, 器質的再生を企て, もって術後障害を是正する必要がある. 実験的にナリプシンインヒビター(以下TI)の経口投与をつづけると, フィードバック機構を介してCCKなどの消化管ホルモンが放出され, それにより正常膵は栄養効果をうけて再生肥大することが知られている. そこで, ラットを開いて85%膵切除を施行し, TI0.5mgを1mlの飲料水に混じ数週に亘り経口投与したところ, この広範切除された残膵においても膵栄養効果は発現し, 膵外分泌機能もインスリン分泌機能もともに有意に是正されるのを確認した. ついで癌手術の際の神経郭清のモデルとして, 上記効果が神経郭清操作によって神経支配の遮断された切除残存膵においても発現するか否かを検討した. 上記85%膵切除に, 単独TI投与群, 迷切神経切断プラスTI投群, 交感神経切除プラスTI投与群, 切除以外の一切処置を加えなかった対照群の4群に細分し, 術後6週目に虐殺して比較検討した. その結果上記神経遮断は膵再生促進効果になんら障害を及ぼさないことが判明した. 膵がんに対し膵頭十二指腸切除をうけた患者を再建別に大別して, 残脾再生を促進するとされるCCKの血中放出の状況を検討した. その結果, ビルロートI法方式再建群ではビルロートII法方式再建群よりも有意に良好なるCCK放出が行われていることが確かめられた. すなわち, 再建法に工夫を加えることにより, ヒト膵切除後の残膵の再生促進が叶えられる可能性が示された.
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