研究課題/領域番号 |
60480311
|
研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
桜井 靖久 東京女医大, 医学部, 教授 (20010027)
|
研究分担者 |
片岡 一則 東京女子医科大学, 医学部, 講師 (00130245)
大河原 久子 東京女子医科大学, 医学部, 助手 (10075468)
|
キーワード | 糖尿病治療 / ハイブリッド型人工膵臓 / Diffusion Chamber / 合成高分子膜 / 同系移植 / 異種移植 / 単層培養 / 浮遊培養 |
研究概要 |
生体細胞と高分子基材との協合体であるハイブリッド型人工膵臓は、糖尿病患者の糖代謝機能等を生理的な状態に維持するための治療装置として優れた性能が期待できる。初期に開発したハイブリッド型人工膵臓は中空糸の中に血液を流し、外側に膵ランゲルハンス氏島(以下ラ島)を浮遊させる方法であった。しかし、浮遊培養におけるラ島細胞の長期間の機能維持が困難であり、また、中空糸繊維の抗血栓性が満足なものでなかった。 そこで、我々は膵ラ島を単層培養することによって、長期間内分泌機能を有する膵島培養法を確立し、さらにそれら、培養ラ島を上下より合成高分子膜でサンドイッチ様に包埋したDiffusion Chamberを開発した。60年度は、この人工膵臓を用いて短期間における同系移植による機能評価を行なった。61年度は同系(マウス→マウス)および異種(ラット→マウス)移植における機能評価を行なった。すなわち、マウスまたはラットの膵ラ島を封入したdiffusion chamberを、ストレプトゾシンで作製した実験糖尿病マウスの腹腔内に移植し、血糖を推移を観察した。同系移植においては約100日にわたり血糖・尿糖および耐糖能が改善し、長期移植の可能性を示唆した。しかし、異種移植では一時に血糖の寛解を示したにすぎず、尿糖および耐糖能の改善をみるにはいたらなかった。すなわち、本実験におけるようなDiffusion chamber(高分子膜)を用いての異種移植を長期間可能にするためには、(1)免疫担体細胞の通過を阻止するのみならず、γ-グロブリンの通過を完全にブロックしうる膜を開発するか、(2)膜孔径の異なる2種類の膜を用いて分離透過させ、一方の膜に免疫吸着剤を用いて非生物学的に免疫物質を吸着除去する方法など、今後検討が必要である。長期間の異種移植の可能な生理的高次機能を有する人工膵臓は、有力な糖尿病の治療法となり得る。
|