研究概要 |
本研究の目的は食道癌の外科的治療の補助療法としての効果的組合せ療法の開発である。われわれはまず、実験材料の作製を含む下記の基礎的実験を行ない一定の成果を得た。1.ビーグル犬に実験食道癌を作製し得た。2.ヌードマウス可移植性ヒト食道癌株を8株作製し得た。3.複合療法に向けての単独化学療法を行ない、COOP,MMC,ADR,5FU等に増殖抑制効果が認められたが、株によって反応に差がみられた。4.HpD投与におけるアルゴンレーザー治療実験を行ない有効性が認められた。5.ヒト食道癌株化培養細胞の樹立を試み3株の株化に成功した。6.上記の基礎的実験成果に基づき、温熱化学療法(複合療法)の基礎的研究を行なった。3株間では温度感受性に明確な差を認めた。特に増殖能の回復という立場からみると、臨床に応用される場合は、加温単独治療では、温度作用時間が短かすぎ、抗腫瘍効果さらに根治性という点で問題があるものと考えられた。抗癌剤単独の効果でも、3株間で差を認めた。これら単独治療の欠点を補うべく温熱化学療法実験を行なったが、加温がS期の細胞に最も障害を与えるとされていることより、加温前にS期蓄積性を示す5FUを作用させ、増殖抑制効果の増強を試みた。加温前の前処置としての5FU投与の有用性が示唆された。加温温度あるいは回数、あるいはその両者を増すほど増殖抑制が増強され、さらにADR,COOPまたはMMCを加温することによりさらに増殖抑制が増強された。臨床的には個々の癌細胞の温度および薬剤の感受性の差に留意し前期の如き加温、薬材の組合せにより有効な治療効果が上がるものと考えられた。今後は、ヌードマウス可移植性株やあるいは、ビーグル犬実験食道癌を用いた複合療法in vitroで得られた成果に基いて試みつつ、随時臨床にも応用してゆく予定である。
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