研究概要 |
単クローン抗ヒト肺腺癌細胞抗体1D5(IgMサブクラス)はin vitroの補体依存性殺細胞効果の検索により、ヒト肺腺癌培養細胞株PC-7に対し補体依存性殺細胞効果を示すことが明らかとなった。この結果は、単クローン抗体の臨床応用の可能性を示唆している。さらに、細胞診に広く利用されているスプレー式アルコール固定法を用いた酵素抗体法により染色性を検討した結果、単クローン抗ヒト肺腺癌細胞抗体による肺腺癌細胞培養株PCY-19の染色性を確認した。同抗体の肺腺癌組織のホルマリン固定材料における酵素抗体法では染色性が認められなかった。つまり、ホルマリン固定により失活する抗原基がスプレー式アルコール固定法では保たれていた。同固定法を用いた酵素抗体法は間接蛍光抗体法(未固定)に比較しても、非常に簡便であり、抗原失活も少なく、さらに肺癌診断のための喀痰細胞診,経気管支的擦過細胞診あるいは気管支洗浄細胞診の施行時に、同時に免疫細胞診の検体を作成することが可能であり、免疫細胞診の普及にも非常に有用と考えられる。 肺癌組織多様性の検索では、外科的切除を受けた肺小細胞癌22例において、ホルマリン固定,パラフィン包埋切片を用い、免疫組織染色(ABC法)により免疫組織学的多様性を検索した。各種抗体の陽性率はFH-6(抗シアリルSSEA-1抗体)が18.2%,抗CEA抗体が36.4%,抗EMA抗体が18.2%,5HT(抗セロトニン抗体)が4.5%,抗NSE抗体が54.5%,抗S-100蛋白抗体が18.2%と、肺小細胞癌各症例においての細胞表面抗原表現の多様性が認められた。原発巣とリンパ節転移巣における検索では、10例中8例(80%)で原発巣とリンパ節転移巣間に何らかの抗原表現の差異が認められた。この結果は各症例間,あるいは各症例の病巣部位の違いによる免疫組織学的多様性を示している。
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