研究概要 |
肺癌の診断および再発癌の早期発見の補助診断としての腫瘍マーカーについては, 肺腺癌でSLX, CEA, CA19-9の陽性率が高値を示し, 肺扁平上皮癌でCEA, CA19-9, SCCが高値を示し, 肺小細胞癌ではNSEが高値を示した. SLX, CEA, CA19-9, SCC, NSEの組み合わせによる腫瘍マーカーは肺癌診断において有用であると思われた. 単クローン性抗体作製時のスクリーニング法としてのスプレー式アルコール固定法を利用した酵素抗体法は非常に簡便であり, 抗原失活も少ない. スプレー式アルコール固定法は, 現在, 細胞診に広く利用されており, 喀痰細胞診, 経気管支的擦過細胞診あるいは気管支洗浄細胞診の施行時に, 同時に免疫細胞診の検体を作成することが可能であり, 免疫細胞診の普及にも非常に有用と考えられた. 肺小細胞癌については, 肺小細胞癌各症例における抗体表現の多様性, あるいは各症例における原発巣とリンパ節転移巣間の抗原表現の差異がみられ, 肺小細胞癌細胞の免疫学的な多様性を示しており, 肺小細胞癌治療時にみられる薬剤に対する抵抗性の発現, 転移巣に対する治療効果の低下, などの肺小細胞癌治療経過における生物学的な変化の検索に有用であろう. 肺癌組織内微小環境では, 特にNK活性, K細胞の殺細胞性を検討した. 肺癌患者末梢血中には肺小細胞癌培養細胞株に対するNK活性あるいはK活性が存在し, さらに, rIL-2によりその活性が増強されることが明らかとなった. この結果は肺癌症例における単クローン抗体およびrIL-2による免疫療法の可能性を示唆するものである. 単クローン抗体の毒性の検討では現在までに重篤な毒性は認められなかった. 本研究は単クローン抗体の臨床応用を目的とした基礎的研究であるが, 本研究により単クローン抗体の臨床応用への可能性が認められた.
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