脳腫瘍の高周波(RF)誘電加温法の欠点を補う目的で、組織内加温法を開発し、従来のRF誘電加温との併用療法の意義について検討を行い、以下の結果を得た。 1.組織内加温に関する研究:(1)RF組織内加温用アプリケーターの試作 脳内に刺入設置できるflexible wireを用いた針型電極、小円盤電極を試作し、種々のファントム実験を行い、その加温特性を検討した。その結果、針型電極を多数用いる方法、小円盤電極を容量型誘電加温の形で用いる方法は比較的任意に加温範囲を設定することが可能であり、脳への刺入も比較的安全であった。(2)その他の組織内加温法の検討 今回購入した組織内加温用マイクロウェーブアプリケーターを検討した。その結果、本アプリケーターは組織深達度が低く、有効加温域は約1cmしかなく、臨床例では多数のアプリケーターを刺入する必要がある。ところが、このアプリケーターの直径が3mmと太いため脳内に多数のアプリケーターを刺入するのは難しいことが判明した。 2.RF誘電加温法に関する研究:(1)臨床例での検討 従来から検討を重ねてきた頭蓋外にアプリケーターを置くRF誘電加温法の臨床治験をさらに重ね、これまで15例を治療した。その結果、本法は悪性グリオーマに対して有効かつ安全であることを認めたが、脳深部の加温が不十分であること、加温する健常脳の範囲が広いため温度モニターが不十分であると予期しない高温域を生じうることが剖検例の検討などが明らかとなった。(2)新しい誘電加温法の検討 アプリケーターの一方を従来のように頭蓋外に置き、対極アプリケーターを腫瘍近傍に置いて加温するためのアプリケーターを試作し検討した結果、小さい脳内アプリケーターに傾きをもつ加温域をつくることができた。以上、RF誘電加温とRF組織内加温は様々の形の組合せが可能であり、相互の欠点を補いうる、安全性も高く臨床応用も比較的簡単である、などの結論を得た。
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