研究概要 |
ガングリオシド【GD_2】は、本来、胎児悩で発現され、神経外胚葉由来腫瘍にも認められる、癌胎児性細胞表面抗原である。この抗原に対する抗体は、悪性黒色腫患者血清中にあり、その抗体価と腫瘍の再発は、逆相関することが報告されている。ガングリオシド【GD_3】も、悪性黒色腫で増加し、抗【GD_3】抗体による治療も試みられている。悪性黒色腫は、神経外胚葉由来腫瘍であり、脳腫瘍とくにグリオーマと共通する点が多い。従って、ガングリオシド【GD_2】,【GD_3】の研究は、グリオーマの診断,治療に重要と思われる。本研究は、ガングリオシド【GD_2】に対するモノクロナール抗体の作製とその治療への応用を目的として行った。また、一方では、脳腫瘍の増殖能を抗Brdu抗体による免疫組織化学法で検討し、さらに、効果的な薬物療法を行うための血液脳関門破綻実験も行った。1)ガングリオシド【GD_2】の抽出精製:牛脳よりガングリオシド【GD_1】bを抽出し、β-galactosidaseで変換して【GD_2】を得た。β-galactosidaseによる変換には、jack beanよりは、bovine liver由来のものが効率が良い。2)モノクロナール抗体:牛脳由来【GD_2】は、マウスへの抗原性が弱く、免疫マウスの血清中に抗【GD_2】抗体を認めず、また、抗体産生性クローン細胞も得られなかった。脳腫瘍培養細胞を免疫して得られたマウスモノクロナール抗体(Mab S11E10)は細胞膜表面蛋白(分子量、65000と66000)と反応し、この抗原は、接着斑や微小突起に局在する。正常脳組織では、星膠細胞に限られ、脳腫瘍では、良性星膠腫が発現する。3)脳腫瘍の増殖能:BrdUとりこみ率と、悪性度は、正の相関を示す例が多いが、例外はまれでなく、BrdUとりこみ率と腫瘍増殖とは正の相関を示すことが多い。4)血液脳関門破綻実験:マンニトール動注による破綻法は、正常脳組織部の方が腫瘍部より血液脳関門は破綻されており、本法の臨床応用は望ましくないものと思われる。
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