研究概要 |
末梢神経組織において血流量はその生存、機能保持の重要な因子である。しかし生体内における血行動態は、不明な点が多い。今回、電解式水素クリアランス法、熱伝導式組織血流計を用い、大血管血行遮断時の神経の血流量を測定した。 体重8kgから10kgの成犬を用い、全身麻酔下に、坐骨神経を殿部から膝窩部にかけて展開した。 1)坐骨神経の血行は近位部は、後殿動静脈からの分枝により、遠位端は膝窩動静脈からの分枝により主に支配され、その間の大腿部では分節血行は少ない。 2)坐骨神経の大腿中央部(S),脛骨神経近位部(T)の血流はそれぞれ66.3ml/min/100g,55.5ml/min/100gであった。 3)腹腔大動脈を遮断するとSは46.3ml/min/100gと遮断前の70%の血流となり、Tは11.9ml/min/100g(21.4%)となった。 4)続いて大腿動脈を遮断すると、Sは45.7ml/min/100gとほとんど変化しないが、TはOml/min/100gとなる。この犬は麻酔覚醒後より、下肢は麻痺していた。 5)熱伝導式組織血流計を用い、坐骨神経の血流量を連続的に記録した。腹腔大動脈を遮断すると血流は除々に低下し30秒から1分の間に一定となり、この時の血流量は遮断前の61.2%であった。又遮断開除により、直後は元の血流より20〜30%増加した。 犬の坐骨神経幹内の縦方向の血流が主体であり、腹腔大動腿遮断によってもかなり血流は保たれている。大腿動脈も遮断すると脛骨神経の血流は0となり、神経は壊死に陥いり、下腿以下の麻痺をきたす。
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