研究概要 |
絞扼性神経障害, エントラップノイロパチーの病因として, 圧迫や絞扼などの機械的因子に加えて, 個体の神経易損性が関与していると考えられる. これらの病態を解明するために, イヌ, ラット, モルモットなどを用いて, 実験を行った. 自家考案スプリング式持続圧迫装置をイヌ坐骨神経に埋没装着させ, 圧迫障害を生ぜしめた. このモデルを用いて, 電気生理学的, 組織学的に検索を加え, 臨床でみる絞扼性神経障害類似の病態でるあことが判明した. 今回の研究では, 神経軸索内輸送の状態を知るため, 軸索構成蛋白であるニューロフィラメント(NF)とチュブリン(T)を免疫酵素抗体法を用いて染色しその推移をみた. その結果, NFが1週で圧迫部以遠で減少しはじめ, 軽減した. しかし8週でも完全に消失はしなかった. Tも同様傾向を示した. 末梢神経の局損性を解明するために, 妊娠イヌを用いて, 圧迫実験を行った. これと非妊娠イヌの成績を比較検討した. 神経伝導速度では, 装着前は両群に差がないが, 1週で対照群80%, 妊娠群30%と大きな差が生じた. 対照群に伝導遮断はなかったが, 妊娠群では, 38%に伝導遮断が生じ, 麻痺を呈した. ホルモンの影響をみるためエストロゲン注をメスイヌに行った. エストロゲン値に対照に比べやや高かったが, プロゲステロンに差をみなかった. Estriol負荷によりE_3(Estriol)は著しく増したが, Ey(Estregin)は変化なく, E_2(Estradiol)は軽度に増した. 神経周膜の防衛機構をみるためErtons Bluce染色を行い, 神経血管関門による防衛作用を確認した. 特殊飼育箱によりモルモットを1年, 1.5年, 2年と飼育し, 絞扼性神経障害を発症することができた.
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