研究概要 |
〔目的〕急性呼吸不全症候群(ARDS)に伴う肺障害について、1.肺水腫を主徴とするearly stageにおける酸素ラジカルの関与、2.late stageにおける肺線維化進展の指標について検討した。 〔方法及び成果〕1.急性期障害について:ARDSモデルとして腹膜炎による敗血症ラットを用いた。経時的に血中及び肺ホモゲネートの過酸化脂質・ラジカル消去系因子の変動をみた。腹膜炎発症とともに血中の過酸化脂質増加・トコフェロール減少をみとめた。肺においてもカタラーゼなどのラジカル消去酵素の活性低下をみとめ、72時間後には過酸化脂質の有意な増加が観察された。過酸化脂質は生体膜成分である脂肪酸への酸素ラジカルの攻撃により生じる。このため肺過酸化脂質の増加は、生体膜障害を意味し、血管透過性亢進などの肺障害のあらわれと考えられた。またこの機作にひとつにラジカル消去系因子の減弱が考えられた。2.肺線維化について:ブレオマイシンの気管内投与によりラットに肺線維症を発症させた。経時的に気管支肺胞洗浄(BAL)を行ない、BAL液中の細胞数・成分、BAL液上清の線維化促進成分につき検討した。細胞数は気管内注入処置後1〜14日にわたって処理前の2〜3倍に増加し、炎症細胞の肺への集積が示唆された。また成分では好中球系が優位であり、急性期障害への好中球の関与が考えれらた。BAL液上清の線維化促進成分の測定にはラット肺より得た線維芽細胞を用い、^3H-チミジンの取りこみをみた。無処置ラットにおいては分子量が2,000前後に促進部を、1,000以下に線維化抑制部をみとめた。ブレオマイシン処置後1〜3日目には分子量10,000前後に促進部をみとめ以後漸減したが抑制部は変化しなかった。肺胞マクロファージより放出されるインターロイキン1(分子量約15,000、線維化促進作用をもつ)が分解され、促進部が分子量10,000前後にあらわれたものと考えられた。
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